過労死等防止基本法案(平成25年12月4日提出 衆法第28号)
(なお、原文は縦書きで、「第○条」や年月日は漢数字です。)
平成25年12月4日提出
衆法第28号
過労死等防止基本法案
右の議案を提出する。
平成25年12月4日
◎提出者(11名)
泉 健太 山井和則 大西健介 杉田水脈 重徳和彦 浅尾慶一郎
中島克仁 高橋千鶴子 小宮山泰子 玉城デニー 吉川 元
◎賛成者(134名)
安住 淳 荒井 聰 生方幸夫 枝野幸男 小川淳也 大串博志
大島 敦 大畠章宏 岡田克也 奥野総一郎 海江田万里 菅 直人
黄山田 徹 菊田真紀子 岸本周平 玄葉光一郎 後藤 斎 後藤祐一
郡 和子 近藤昭一 近藤洋介 階 猛 藤原 孝 田嶋 要
木義明 武正公一 玉木雄一郎 津村啓介 辻本清美 寺島義幸
中川正春 中根康浩 長島昭久 長妻 昭 野田佳彦 原口一博
福田昭夫 古本伸一郎 古川元久 細野豪志 馬淵澄夫 前原誠司
松原 仁 松本剛明 三日月大造 山口 壯 柚木道義 横路孝弘
吉田 泉 笠 浩史 若井泰彦 鷲尾英一郎 渡辺 周 足立康史
石関貴史 石原慎太郎 伊藤信久 井上英孝 今井雅人 今村洋史
岩永裕貴 上西小百合 上野ひろし 浦野靖人 遠藤 敬 小熊慎司
小沢鋭仁 河野正美 木下智彦 阪口直人 坂元大輔 坂本祐之輔
桜内文城 椎木 保 新原秀人 鈴木 望 鈴木義弘 園田博之
高橋みほ 谷畑 孝 田沼隆志 中田 宏 中丸 啓 中山成彬
西岡 新 西田 譲 西野弘一 馬場伸幸 林原由佳 東国原英夫
平沼赳夫 藤井孝男 松田 学 松浪健太 松野頼久 丸山穂高
三木圭恵 三宅 博 宮沢隆仁 村岡敏英 村上政俊 百瀬智之
山田 宏 山之内 毅 青柳陽一郎 井坂信彦 井出庸生 江田憲司
大熊利昭 柏倉祐司 小池政就 佐藤正夫 椎名 毅 杉本かずみ
畠中光成 林 宙紀 三谷英弘 山内康一 渡辺喜美 赤嶺政賢
笠井 亮 穀田恵二 佐々木憲昭 志位和夫 塩川鉄也 宮本岳志
青木 愛 小沢一郎 鈴木克昌 畑 浩治 村上史好 照屋寛徳
阿部知子 柿沢未途
過労死等防止基本法
目次
第一章 総則(第1条─第10条)
第二章 過労死等防止基本計画等(第11条・第12条)
第三章 基本的施策(第13条─第19条)
第四章 過労死等防止推進協議会(第20条・第21条)
附則
第一章 総則
(目的)
第1条 この法律は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等の防止に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、過労死等を防止するための施策の基本となる事項を定めること等により、過労死等を防止するための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「過労死等」とは、業務における過重な身体的若しくは精神的な負荷による疾患を原因とする死亡(自殺による死亡を含む。)又は当該負荷による重篤な疾患をいう。
(基本理念)
第3条 過労死等を防止するための施策は、過労死等はあってはならないという基本的認識の下で行われるものとする。
2 過労死等を防止するための施策は、過労死等の背景に様々な社会的及び経済的な要因があることを踏まえ、社会的及び経済的な取組として実施されなければならない。
3 過労死等を防止するための施策は、国、地方公共団体、事業主、医療機関、過労死等の防止に関する活動を行う民間の団体その他の関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない。
(国の責務)
第4条 国は、前条の基本理念にのっとり、過労死等を防止するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、過労死等を防止するための施策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業主の責務)
第6条 事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等を防止するための施策に協力するとともに、その雇用する労働者の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(国民の責務)
第7条 国民は、過労死等を防止することの重要性に対する関心と理解を深めるよう努めるものとする。
(過労死等問題啓発週間)
第8条 国民の間に広く過労死等を防止することの重要性に対する関心と理解を深めるため、過労死等問題啓発週間を設ける。
2 過労死等問題啓発週間は、11月17日から同月23日までとする。
3 国及び地方公共団体は、過労死等問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。
(法制上の措置等)
第9条 政府は、過労死等を防止するための施策を実施するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告)
第10条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が講じた過労死等を防止するための施策の実施の状況に関する報告書を提出しなければならない。
第二章 過労死等防止基本計画等
(過労死等防止基本計画)
第11条 政府は、過労死等を防止するための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、過労死等を防止するための施策の推進に関する基本的な計画(以下「過労死等防止基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 厚生労働大臣は、過労死等防止基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
3 厚生労働大臣は、過労死等防止基本計画の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、過労死等防止推進協議会の意見を聴くものとする。
4 政府は、過労死等防止基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 政府は、過労死等をめぐる状況の変化を勘案し、及び過労死等を防止するための施策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも5年ごとに、過労死等防止基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。
6 第2項から第4項までの規定は、過労死等防止基本計画の変更について準用する。
(関係行政機関への要請)
第12条 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、過労死等防止基本計画の策定のための資料の提出又は過労死等防止基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。
第三章 基本的施策
(調査研究の推進等)
第13条 国及び地方公共団体は、過労死等に関する実態の調査、過労死等の効果的な防止に関する研究その他の過労死等に関する調査及び研究の推進並びに過労死等に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。
(国民の関心と理解の増進)
第14条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、過労死等を防止することの重要性に対する国民の関心と理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。
(医療提供体制の整備)
第15条 国及び地方公共団体は、過労死等のおそれがある者に対し必要な医療が早期かつ適切に提供されるよう、診療を受けやすい環境の整備等必要な施策を講ずるものとする。
(過労死等のおそれがある者及び親族等に対する支援)
第16条 国及び地方公共団体は、過労死等のおそれがある者及びその親族等に対する適切な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする。
(民間団体の活動に対する支援)
第17条 国及び地方公共団体は、民間の団体が行う過労死等の防止に関する活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(事業主の取組に対する支援)
第18条 国及び地方公共団体は、労働条件、職場環境等の改善その他の過労死等の防止のための事業主の自主的な取組を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(人材の確保等)
第19条 国及び地方公共団体は、過労死等の防止に関する人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
第四章 過労死等防止推進協議会
第20条 厚生労働省に、過労死等防止基本計画に関し、第11条第3項(同条第6項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、過労死等防止推進協議会(次条において「協議会」という。)を置く。
第21条 協議会は、委員20人以内で組織する。
2 協議会の委員は、業務における過重な身体的又は精神的な負荷による重篤な疾患にかかった者及びその家族又は当該負荷による疾患を原因として死亡した者(自殺により死亡した者を含む。)の遺族を代表する者並びに過労死等に関する専門的知識を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する。
3 協議会の委員は、非常勤とする。
4 前3項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(以下、略)
理由
近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等の防止に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、過労死等を防止するための施策を総合的かつ計画的に推進する必要があるこれが、この法律案を提出する理由である。